ZUTTOな森 社屋|ZUTTO OFFICE

ZUTTOな森 社屋|ZUTTO OFFICE

建物名称 : ZUTTOな森 新社屋
施  主 : ZUTTO株式会社
建設場所 : 東京都江東区新木場
建物用途 : 事務所
構造規模 : S造 地上3階
敷地面積 : 640.93㎡
建築面積 : 355.64㎡
延床面積 : 788.56㎡
設計監理 : 河原泰建築研究室
竣  工 : 2008.09

CONCEPT

ずっと続けられる世の中の実現を目指して、ZUTTOな商品やサービスで世の中をいっぱいにすることを目指す会社の新社屋です。

■大きすぎる倉庫
 新木場に埋もれている倉庫をオフィスとショールームにリニューアルできないかという相談からプロジェクトがスタートしました。ZUTTOの社員は24名。50坪もあればオフィスとしては十分ですが、倉庫の面積は240坪あります。しかもリニューアルの費用は1800万円。スペースから考えても、手持ち資金から考えても、この倉庫は大きすぎたのです。

■赤坂から新木場へ
 もう一つの気になったのは、環境の変化。以前のZUTTOのオフィスは、赤坂のど真ん中にあり、オフィスワーカーが働く環境としてはとても便利な場所。一方、この倉庫がある場所は、新木場の駅からも歩いて10分以上かかる木材問屋や木工場が集積する地域。まわりからはがんがん騒音が聞こえ、とてもパソコンを駆使しながら働くのに適した環境とはいえません。

■改修しないで環境をつくる
 持て余すほど広すぎる倉庫。シャッターを空けると容赦なく聞こえる騒音。この場所を建築的な手法で快適な環境にリフォームしようと考えると、お金はいくらかかるかわからない。そこで、床・壁・天井・開口部を一通りきれいにするといった一般的な改修は行わないことにした。
まず手をつけたのは、シャッターをあけつつ騒音を遮り、倉庫の奥まで光がいきわたるようにすること。費用的にガラスカーテンウォールは無理なので木造建物の構造材で柱と梁をつくり、そこにガラスをはめこむようにした。壁は断熱材を塗ったままでおしまい。床をつくるのも、オフィスとして必要な50坪分だけ。天井も必要なしと割り切り、どんどん改修する範囲を少なくしていった。

■森をつくる
 改修しないで、お金をかけずに快適な環境をつくるために提案したのは、社員一人につき1本の樹を育てて、倉庫の中に森をつくること。大きな倉庫の中の一番奥の場所をオフィスとし、オフィスに至るまでのスペースは、倉庫の中の森にするのです。外からみると、まるで植物園。新木場の駅から殺伐とした風景の中を歩いてきても、ここに来れば別世界です。オフィスの中からみれば、外に森が広がっていて、ここが新木場であることを忘れてしまいます。たまには森の中で働いてみるのもいいでしょう。自分のオフィスをみながら、公園で働いているような気分です。2階に設けたミーティングスペースからは森を眼下に見下すという不思議な景色が広がります。森をつくるというアイデアが、この倉庫のさまざまな問題を解決してくれました。建築材料をつかってきれいに造る以外にも、環境をつくる方法はあるということを、このプロジェクトで体現できました。建築家ができることは、まだまだいっぱいあると実感します。

PHOT GARALLY

PHOT GARALLY